2: いろいろな感覚

(公開日:2020年4月23日)

まず最初に…

たくさん専門用語が出てくると思いますが,全部覚えようとしてもできません!…から,難しい言葉が出てきても(読みは大切なのでわからなかったらネットで調べよう)適当に読み流してくださいね。ただ,太字になっているものなどは,知っておくべき用語と思っておいてください(高校までの理科で習ったことも多いと思いますが…大学生に必要なのは丸暗記型の勉強ではありません)。

とにかく,最後までいってくれ~ m(__)m。

五感(五官)

私たちは,外界のエネルギーを眼や耳などの感覚器官を通して受容します。一般に五感五官)と呼ばれる感覚領域には,視覚聴覚味覚嗅覚皮膚感覚(触覚)があります。また,これ以外にも,運動感覚筋感覚),内臓感覚有機感覚),平衡感覚を加えることがあります。前回の授業でお話ししたように,心理学ではこれらを感覚モダリティmodality)あるいは感覚様相と呼びます。「モダリティ」って聞きなれない言葉ですが,モード(mode)の形容詞がmodal,それをまた概念として名詞にしちゃったのでmodalityとなったとでも考えましょう。じゃモードって何なのよというと「様式」(やり方)というような意味なのです。

何か好きな音楽を聴いているところを想像してみてください。これは聴覚のイメージですね。では,何か好きな食べ物の味わいを想像してみてください。これは味覚のイメージですね。この音楽と味覚って,延長線上にあるような感覚でしょうか? 全然質的に違うものに感じられると思います。そこで,感覚の違いって,そもそも様式(モード)が違うんだ…と考えるようになったわけです。日常の会話でも,「今は勉強モードだから」なんていうときには,「遊びの延長ではないよ」という意味がありますよね。このように感覚はそれぞれ「」が違うのです。この質の違いを強調した概念として「クオリア」という用語もあります。こちらは脳科学分野で有名な概念なのですが,突き詰めていくと「意識とは何か」って,ヴントさんの時代に引き戻されるような世界(哲学の認識論)が待っています (^^)。

19世紀の生理学者ミューラー(Müller, J.)は,この感覚の質的な違いが,与えられた刺激に依存するのではなく,それぞれの感覚受容器に依存すると考えました。彼によれば,光が視覚を,音が聴覚をもたらすのではなく,眼が刺激されることが視覚を,耳が刺激されることが聴覚をもたらすというのです。実際,眼球を圧迫したり電気で刺激すると光覚が生じます,また,耳の内部が炎症(たとえば中耳炎など)によって圧迫されると耳鳴りが聞こえます。五感は刺激の物理的特性に依存するのではなく,感覚受容器が特有にもつ神経エネルギーに依存するという,このミューラーの考えは「特殊神経エネルギー説」と呼ばれます。専門用語として覚えておきましょう。

もうひとつ専門用語。一般に,それぞれの受容器には最も受容効率が高く,関係の深い刺激が存在します。眼ならば光,耳ならば音ですね。このような刺激を「適刺激」といいます。また,眼や耳に対する圧刺激のような刺激を「不適刺激」といいます。

今回の授業では,主要なモダリティに関して,その感覚の仕組みを見ていきます。ちなみに,お気づきのように,今日からこの授業では,眼球を指す意味で「め」というときには「眼」という漢字を使います。

視覚

がなければ,我々はものを見ることはできません。視覚情報を媒介する光は,下の図に示しますが,物理的には電磁波(電波)の一種です。でも,みなさんがもつ携帯電話を見たところで,そこから発せられている電波を見ることはできませんよね。眼がとらえることができる可視光線は,非常に限られた領域の電磁波だからです。

電磁波は,その名の通り波の特性をもっていて,波の長さ(波長)によってその性質が異なります。私たちが光と呼んでいるものは,極めて狭い特定領域の波長(380 nm~780 nm)をもつ波です。“nm”は「ナノメートル」と読み,1/10億mの単位です。眼はこの領域の電磁波を受けると光覚をもたらしますが,そのとき,波長の違いは色の違いとして知覚されます。光の色は,短波長側から,紫(青紫),青,青緑,緑,黄緑,黄,橙,赤の順に並びます。プリズムで分けられた光や虹の中に複数の色が並ぶのが観察されますが,これは,分子密度の異なる物質境界を通るとき,一般に短波長の光ほど屈折したり散乱しやすく,長波長の成分ほど直進する傾向が強いためです。空が青く見えるのは空の太陽以外の場所で空気中の水蒸気や塵で屈折・散乱した青い光が見えるからですし,夕日が赤く見えるのは太陽の光が大気の層を斜めに長い距離を通ってくるときに赤い光が直進して目に届きやすいからです。

視覚の受容器である眼球の構造はカメラとよく似ています。カメラは凸レンズを利用して,光を屈折させ,フィルムに逆さの像を結像させます(デジタルカメラではCCDやCMOSと呼ばれる受光素子が使われますが)。これに対して,人間の眼はどうなっているのでしょうか。

下の図は,私たちの右眼を上から見た断面図です。外界の光は,眼球表面にある角膜という薄い膜を通って,水晶体(レンズ)によって屈折させられます。水晶体は凸レンズの形状をしていて,言葉通り,カメラのレンズに相当します。レンズの反対側には,カメラのフィルムに相当する網膜があって,水晶体で屈折させられた光は,この上に逆さの像を結びます。カメラでは,ピントを合わせるためにレンズとフィルムの距離を変化させますが,眼球では,レンズの厚みを変化させることでピント調節が行われます。レンズの厚みを変えるのに使われている筋肉が毛様体筋です。網膜には,視細胞と呼ばれる神経細胞が存在し,これが光を受けることで神経電位が発生する仕組みになっています。神経電位は,視神経によって中枢(脳)へと伝えられますが,視神経が眼球から外へ出ている部分には視細胞はなく,見る機能をもたないことため,盲点と呼ばれます。

水晶体の前側は,虹彩(こうさい)と呼ばれる輪状の膜に囲まれていて,光は中心の通過孔(瞳孔)を通ったものだけが眼球内に進入する仕組みになっています。ちなみに,みなさんの虹彩は何色ですか? 日本人は(濃さは違うけど)みんな焦げ茶色ですよね。それに対して,外国の人には青や緑っぽい灰色などいろんな人がいます。そんな人って,皆白人じゃありませんか? 私たち黄色人種は(黒人種も)皮膚など身体の表面の細胞に「メラニン」という色素をもっています。これがみんな焦げ茶になる理由です。葉っぱと同じです。葉っぱも葉緑素をもっているのでみんな「緑」に見えますよね。緑はまさに葉緑素の色なのです。秋になって葉っぱが枯れて葉緑素が抜けると葉っぱが本来もっている色(モミジの赤とかイチョウの黄色とか)が見えてきます。白人の人はメラニン色素が少ないので,虹彩本来の色が出ているわけですね。この虹彩は,瞳孔反射(対光反射)によって,まぶしい光の下では瞳孔を縮小させることで光量を制限し,暗い光の下では拡大させて光量を増やすように働きます(私たちは瞳孔は真ん丸ですが,みんなが大好きなネコちゃんは縦長,ヤギさんは横長になります)。とにかく,虹彩は,カメラレンズの絞りと同じように,露光調節の機能を果たしているということを知っておきましょう。

網膜上の視細胞には,感光ピグメントと呼ばれる先端部の形状が円錐状のものと円柱状(竿状)のものとがあり,前者は錐体,後者は桿体と呼ばれます。これらの視細胞は,感光ピグメント内に光化学反応を引き起こす感光色素視物質)をもちますが,錐体の視物質には,光の波長による吸収特性が異なるものがあり,それによって錐体は,420 nmの波長に対して最も感受性の高い短波長型(S錐体;SはshortのS),530 nmに感受性の高い中波長型(M錐体;MはmidiumのM),560 nmに感受性の高い長波長型(L錐体;LはlongのL)に分けられます。この3種類の錐体の反応が私たちに色覚をもたらすので,3種の錐体の一部に欠損があったり,十分に機能しない場合には色覚障害色盲色弱)が生じます。また,錐体が反応するには,比較的高照度の光(昼間のように明るい光)が必要になります。したがって,明かりの少ない夜道のような暗い場所では錐体は使えません(暗い夜道を歩いていて「まぁ綺麗なお花~」なんて見つける人はいないでしょう ^^;)。そのような暗い場所での視覚を支えるのが桿体なのです。桿体は,錐体と異なり1種類しかないのですが,その感光ピグメントには,ロドプシン(視紅)と呼ばれる微弱な光に対しても反応できる視物質をもっているので,私たちは暗いところでもものを見ることができます(ただし,桿体視という暗い場所に順応した状態では色彩を感じることができません)。

なお,錐体は555 nm近辺で最も感度が高いのですが,桿体は,より短波長側(青に近い側)の510 nm近辺に感度のピークをもっています。そのため,明るい環境と暗い環境では色の明るさが変わって見えます。これを「プルキンエ現象」と言います。明るい昼間には赤いバラなどが鮮やかに見えるのに,夕暮れになると,青いスミレなどの花がより鮮やかに感じられませんか? さらに,網膜上での錐体・桿体の分布は均一でなく,視野中心の最も解像力の高い網膜部位(中心窩)にはほとんど錐体しか存在しません。だから,暗い場所では視力が急激に低下し,小さな文字などが見づらくなります。また,夜空で暗い星を探すとき,視野の周辺では見えるのに,はっきり見ようとして目を向けると見えなくなるなどの現象が経験されます。

聴覚

聴覚情報である音は空気の振動です。音の伝わり方は,ちょうど水面を波紋が広がっていく様子に似ていて,空気中では1秒間におよそ340 mという速度で伝わります。下に例を示しますが,音も振動なので波の性質をもっています。1秒あたりの振動の数を周波数と呼びます(単位はHz;ヘルツ)。この振動が多い音は高い音に,少ない音は低い音に聞こえます。また,振動の振れ幅(振幅)が音の大きさに相当します。さらに,音によって振動の波形はさまざまで,この波形の違いが私たちには音色の違いとして知覚されます。下図の(A)は電話の発信音の波形を表したものです。電話の発信音には,440 Hzの正弦波が使われており,これを純音と言います。その波形は単純ですね(私たちには「ピー」とか「プー」と聞こえます)。これに対して,(B)は同じ440 Hzの周波数をもつハーモニカ音(“ラ”の音)の波形ですが,こちらは非常に複雑な波形をしていることがわかります。後に書きますが,このような複雑な波も実はたくさんの純音の寄せ集めなので「複合音」と言われます。波形が違っても,同じパターンの波が純音と同じ周期で繰り返し出現していることがわかるでしょうか,この繰り返しが音の高さを決めているのです。

音響スペクトル分析」というコンピュータを使って行う周波数分析処理があって,これを使うと,どのような仕組みで,ハーモニカ音がこんな複雑な波形となっているかがわかります。実際に上の図の(B)のハーモニカ音の音響スペクトル分析をやってみたのが下の図です。グラフに示される棒は,それぞれがピーやプーという純音です。ハーモニカ音は,一番左にある440 Hzの純音をベースに,いくつもの高周波の純音の成分から複合してできていることがわかります。ハーモニカの内部には,固有の振動周波数をもつ振動・反響部位がたくさんあります。僕らがハーモニカを吹くと,息の力によってそれらが共に振動することで,複雑な音色を生み出しているのです。

この仕組みは,私たち人間が発する「音声」についても同様です。下の図は,母音の発声に対して音響スペクトル分析を行った結果ですが,母音によって音を構成するスペクトル成分(周波数成分)が異なっているのがわかるでしょうか。私たちもまた,声帯の振動音を基本に,喉頭,咽頭,口腔,鼻腔,舌,唇などの発声器官の振動・反響部位を変化させることで,複雑な音声を作り上げているのです。

音の受容器である耳は,下の図のような構造になっています。空気の振動は,外耳道(耳の穴ですね)を通り,その奥にある鼓膜を震わせます。鼓膜の振動は,中耳にある槌(つち)骨砧(きぬた)骨鐙(あぶみ)骨という3つの耳小骨を経由して,内耳に伝えられます。内耳には蝸牛(かぎゅう)と呼ばれるカタツムリ型の器官があります。蝸牛は引き伸ばすと管状になっています。この管の内部は基底膜という膜で2分されて,そこにはリンパ液が満たされています。基底膜は管の先端部(蝸牛中心部)では厚く柔らかく,管の根もとでは薄く硬くなっています。そのため,蝸牛は管の位置によって振動に対する共振特性が異なります。柔らかい先端部は低い音に,根もとは高い音に同期して共振するわけです(身の回りのものを叩いてみたら,柔らかい物は低い音が,堅い物は高い音がしますよね)。このような構造によって,蝸牛内部では,音に含まれる特定の周波数成分に対して特定の場所が共振します。基底膜には有毛細胞という振動によって神経電位を発する細胞が並んでいるので,音の高さによって違うところが共振してそこから聴覚信号が発生するという仕組みになっています。このようにして,耳は音響スペクトルの分析装置として働いているわけです。

(もううんざりしていると思いますが)中耳にある3つの耳小骨についても説明させてください。これらの耳小骨は,空気のかすかな振動エネルギーを増幅して効率よく内耳に伝えるインピーダンス整合といわれるようなレベル調整の働きをもっています(鼓膜という大きな面積の小さな振動を,小さな面積の大きな振動として蝸牛の卵円窓に伝える)。また,大きな音に対しては,鼓膜を硬くして耳小骨の動きを鈍らせることによって,内耳への過大な入力を緩和するという過負荷緩衝保護の機能も併せもっています。このような仕組みのため,私たちの耳は,極めて小さな音から大音響まで,1兆倍ものエネルギーの違いがある音を受容することができるのです。また,音の高さについても,(2000~3000 Hzで最も感度が高いが)20 Hzの極めて低い音から20000 Hzの超高音にいたるまで広い可聴閾をもっています。

味覚

味覚は,口にしたものに含まれる化学物質に対して生じる感覚です。味覚には,「甘味(かんみ)」,「塩味(えんみ)」,「酸味」,「苦味」の4種の基本味覚があります。ときには,これに「うま味」を加えた5種の基本味覚があると書かれている本もあります。また,「辛味」や「渋味」は,味覚と口腔粘膜の温度感覚や痛覚の複合によって生じる感覚です。ちなみに,塩味を「鹹味(かんみ)」ということもありますが,甘味と読みが同じになるのでごっちゃになるから私は使いません…が,一応,この言葉も覚えておきましょう。

味覚受容器は舌の乳頭上にある味蕾という器官で,これが刺激されることで感覚が生じます。また,基本味覚にはそれぞれ,その味覚を引き起こす呈味(ていみ)物質と呼ばれる物質が存在します。甘味は,各種糖類や,グリシン,アラニンなどのアミノ酸,サッカリンなどの人工甘味物質,ステビアなどの天然甘味物質によってもたらされます。塩味は塩化ナトリウムや塩化カリウムなど,酸味は有機酸に含まれる水素イオンの刺激作用で生じるといわれています。苦味は,アルカロイドやアミノ酸に含まれ水と混ざらない性質をもつ疎水性(そすいせい)物質によって,うま味は,グルタミン酸ナトリウムやイノシン酸ナトリウムなどによってもたらされます。薬の多くが口に苦いのは,腸に届く前に溶けてしまわないように疎水性物質を入れてあるからです(…とチコちゃんが言ってました!…5歳なのに物知りだねぇ~)。

味覚は,本来,口腔に取り込んだものが摂取してよいものか,吐き出すものかを選別するためにあって,快-不快の感覚と深くかかわっています。基本味覚についても,甘味はエネルギー源,うま味は蛋白質の信号として働き,食欲を喚起したり摂取行動を引き起こすように動物は作られています。また,塩味はミネラルの信号ですが,低濃度では快感だけど,高濃度では不快感を引き起こします。酸味も,一般に低濃度では快感,高濃度で不快感を引き起こし,時には腐敗の信号としても機能し,その際は強い回避の対象となります(先日回避できずにキムチでお腹こわしました←うまいキムチを食べると大体お腹こわします。みなさんは違いますか?)。苦味も,疎水性が多くの毒物に共通する性質であることから,生体に有害な物質を検知するための信号として働いていると考えられています。

嗅覚

嗅覚は,鼻腔(びくう)最上部の嗅上皮(きゅうじょうひ)にある嗅受容細胞(きゅうじゅようさいぼう)が,嗅物質(きゅうぶっしつ,有香物質)といわれる揮発性の分子によって刺激されることで生じる感覚です。有香物質にはおよそ40万種類あるといわれており,それを分類しようとする試みは古くから行われてきましたが,決定的なものはまだありません。

臭いも,「匂い」または「臭い」という2つの漢字表記が存在することからも明らかなように,快-不快と関わりの強い感覚です。嗅覚の感覚特性においては,味覚と同様,わずかな化学物質を検出できる感受性の高さが特徴ですが(特にみんなが大好きなワンちゃんは匂いに敏感ですね),その一方で,感覚に対する順応(慣れ)が極めて速く,その効果も大きいことが知られています。また,その嗜好に個人差が極めて大きいことも特徴です。

皮膚感覚

体の表面で感じられる感覚を皮膚感覚といい,主に,触覚圧覚温覚冷覚痛覚の5つの感覚が知られています。ものに触れたときに感じる触覚と,皮膚に対する圧力を感じる圧覚を分けてとらえるのは,それらの受容器が違っていて,その反応特性にも違いがあるからです。温覚と冷覚も,温度に対する感覚という点ではひとつの物理的特性を感受する仕組みですが,皮膚上の感覚点が異なります(それぞれ温点,冷点と呼ばれる)。そのため,40度~50度で皮膚の冷点が刺激されると,温覚でなく冷覚が感じられる現象(矛盾冷覚)という現象が知られています。痛覚は,侵害性感覚と呼ばれることもあり,生体に危険を及ぼすかもしれない侵害性の刺激が加えられたときに,それに反応して生じる感覚です。皮膚感覚としての痛覚は,皮膚に広く高密度に分布する痛点が刺激されることで生じますが,痛覚は体表面に限らず,筋肉や骨,関節などの深部感覚や内臓感覚としても生じる広範な体性感覚です。また,受容器の刺激と,痛覚の生起が必ずしも対応しない場合もあり,中枢における痛みの受容と痛み感覚の制御過程を理解することの重要性が指摘されています。

その他の感覚

我々の感覚モダリティには,これまでに述べてきた五感に加えて,運動感覚筋感覚),内臓感覚有機感覚),平衡感覚が区分されています。運動感覚は,骨格筋や腱,関節の受容器に基づいた,身体各部の位置や動きを知る感覚で,自己受容感覚あるいは深部感覚とも呼ばれます。内臓感覚は,身体内部の内臓の感覚受容器に基づく感覚で,空腹,満腹,渇き,便意,尿意などの臓器感覚と,局在が不明瞭で不快感や吐き気,冷や汗などの症状を伴う内臓痛覚があります。平衡感覚は,前庭器官と呼ばれる内耳の前庭にある半規管耳石器が受容器です。半規管は上下,左右,傾き方向の3次元に対応する3つの管からできているため三半規管とも呼ばれ,頭部が回転すると,それによって管内のリンパ液が移動し,運動を感じることができるようになっています。耳石器は,重力や直線加速に応答します。これらの前庭機能に異常があると,強いめまいやふらつき,吐き気などに襲われますが(「メニエール病」が有名ですね),そのときに耳鳴りを伴うことが多かったりするのは,前庭器官が聴覚において重要な役割をもつ蝸牛とつながるひとつのユニットを構成しているからです。

 

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