この課題について
神経心理学領域でよく知られるトレイルメイキングテスト(Trail-Making Test, TMT)の電子版です。ゲームのように遊ぶことができますので,認知機能のリハビリテーションにも応用できるようにと開発しました。以前から掲載していたC++版をUnityに移植したものですが,刺激項目数を5個~50個まで変えることによって,難易度を操作できるようにしました。また,Tobiiのゲーム用アイトラッカーがあれば,視線で反応することも可能です。
2015年に公開した旧版の課題が結構人気で今でもたくさんダウンロードしていただいていますので,卒論生や修論生の研究を機会にUnity版を作りました。以前のプログラムよりPC環境を選ばず動くようになっていると思います。
本プログラムは,科学研究費助成事業(基盤研究(C),課題番号19K03389,「センサ技術を活用した障害児の認知機能評価・発達支援プログラムの開発」)の補助を受けました。また,プログラムは私のゼミ生である小谷和泉さん・若林有菜さんの2020年度卒業論文研究「トレイルメイキングテストとモグラたたき課題を用いた注意機能評価」および有吉紅葉さんの2022年度修論研究「ゲームを通した実行機能の評価」において使用したものです。
Web版プログラムについて
このプログラムには,ホームページをご覧のブラウザ上で動作するWeb版があります。データの記録機能がなく視線にも対応していませんが,手軽に試してみることができます(ブラウザによっては対応していないことがありますがご容赦ください)。
Web版トレイルメイキングテスト(v2.010)
- Windows版をもとにしているので,メニュー画面で[ESC]キーを押すと画面は変わりませんがプログラムは終了しています(なのでもう反応しません)。その場合は,ブラウザのタブを閉じて,再度開き直してください。
- v2.010からPC版・Web版および日本語版・英語版のフォントを統一しました。また,Web版の画面の使い方を変更しました。
- English version
- This version is compiled in English mode.
- 旧版はこちら…古いものが必要な方はこちらを使ってください。
- v2.003
- 1つ前のWebバージョンです。
- English version (v2.003)
- v2.003
動作環境
ハードウェア
- Windows PC(プログラムは64ビットでコンパイルしています。)
- マウスでも使えますが,タブレットPCを使ったタッチパネルでの使用を前提にプログラムを作っています。
- Tobii社のゲーム用視線センサ(EyeTracker 4C,5,あるいは EyeX)があれば,視線で遊ぶこともできます(5のドライバ更新に伴って動かなくなっていたのを修正しました:2023/7/1)。
OS
- Windows 11で開発,動作確認。
使い方
プログラムの実行
- zipファイルをダウンロードした後,まず「右クリック」→「プロパティ」を選択して,「このファイルは他のコンピュータから取得したものです。…アクセスはブロックされる可能性があります。」という記述の横の「許可する」にチェックを入れて,ブロックを解除してください(これをしないと,初回実行時に「WindowsによってPCが保護されました…不明な発行元」というダイアログが出たり,異常に長い起動時間がかかることがあります)。
- その後,フォルダごと解凍して,「TMT02010_release」フォルダ内の「TMT02.exe」を実行してください。
条件設定
- プログラムを起動すると下のような条件設定画面になりますので,必要に応じて条件を設定します。
- 参加者名…参加者名を入力します。
- パート…「Part A」か「Part B」を選びます。Part Aは,数字を順に選んでいく課題です。Part Bは,数字とひらがなを交互に選んでいきます。
- 項目数…5~50までの数を入力します(標準的なトレイルメイキングテストの刺激項目数は25個です)。
- Random seed…コンピュータで発生させる乱数の種を指定します。「0」を入力すると,毎回ランダムな刺激配置になりますが,1以上の整数を入力すると,いつも同じ配置が再現されます。
- 視線入力…Tobiiのゲーム用アイトラッカーがあれば,視線で遊ぶことができるようになります(キャリブレーションはドライバ側で行ってください)。
- 停留時間…視線で遊ぶときに,選択したとみなす停留時間を秒単位で指定します。
- 当たり判定領域…タッチ座標や視線が停留したとみなす範囲を刺激の大きさに対する倍率で指定します。視線で遊ぶ場合は1.2くらいがちょうどいいと思います。
- 視線表示…水色の点で視線位置を表示します(ゲーム中は[G]キーで表示の切り替えができます)。
- English…英語モード:Part Bでひらがなの代わりにアルファベットが表示されます。
- 記録を見る…これまでの記録の一覧が表示されます。
- スタート…ゲームを開始します。
- プログラムを終了するには,この画面で[ESC]キーを押してください。
ゲーム画面(画面はv2.003のものです)
- ゲームを始めると,画面に刺激パターンが表示されます。「1」の項目をタッチ(クリック)すると,すべての項目が表示されて時間計測が始まります。
- パートAでは,数字を順番にできるだけ速く間違えないようにタッチ(クリック)します。
- パートBでは,数字とひらがなを交互に選びながら順番にできるだけ速く間違えないようにタッチ(クリック)します。
- 英語モードのPart Bでは下の画面のようにひらがなの代わりにアルファベットが表示されます。
順位表示
- すべての刺激項目を選択し終えると,所要時間が表示され,画面をタッチするか,[Enter]キーを押すと順位表示画面にすすみます([ESC]キーを押すとこの画面をスキップして条件設定画面に戻ります)。順位表示画面では,「同条件のみ」にチェックを入れると,パートと刺激項目数が同じ条件のみが抽出されます。
データファイルなど
このプログラムでは,「data」フォルダ内に以下のファイルが自動作成されます。csv形式(カンマで区切られたテキストデータ)のファイルは,ダブルクリックするとExcelで開くことができます。
_param.txt
- プログラムの条件設定などが記録されているファイルです。
- participant…参加者名
- part…1:Part A,2:PartB
- n_stims…刺激項目数
- rnd_seed…乱数の種
- flag_gaze…0:視線入力なし,1:視線入力を使う
- gaze_time…視線停留時間
- flag_gazeplot…0:視線表示なし,1:視線表示あり
- ColliderSize…当たり判定領域サイズ
- flag_refine…記録画面での同条件のみ抽出フラグ
- このファイルを削除すると,設定が初期状態に戻ります。
_TMT02.csv
- これまでに実施した課題の結果のサマリー(集約データ)を保存しているファイルです。
- Participant…参加者名
- Date…日付
- Time…時刻
- Part…パート
- NItems…刺激項目数
- TotalRT…所要時間
- このファイルを削除すると,過去の成績がクリアされます。
- Excelなどでこのファイルを開いたまま,プログラムを実行しないようにしてください。ファイルにデータが書き込めずにエラーとなります。
日付_時刻.csv
- 課題遂行データの詳細が記録されたデータファイルです。
- このファイル内のデータ項目の意味は次の通りです。なお,以前公開していたC++版とは異なり,このプログラムの反応時間の精度は16.7ミリ秒単位です。
- Participant…参加者名
- Date…日付
- Time…時刻
- Part…パート
- NItems…刺激項目数
- Trial…試行番号(反応の番号)
- Target…その試行でのターゲット(目標刺激)の番号
- HitStim…反応した(タッチあるいは視線が停留した)刺激項目の番号
- String…刺激項目に書かれた文字(数字)
- StimX…タッチした刺激のX座標
- StimY…タッチした刺激のY座標
- RT…ミリ秒単位の反応時間(前の正反応からの時間)
- TotalRT…ゲーム開始からの累積時間(ミリ秒単位)
- Error…反応した刺激がターゲットでない場合は「1」
制限事項等
- 作者(吉田)は,このプログラムの動作を一切保証するものではありません。また,このプログラムを動作させたことによる一切の損失・損害に責任を持ちません。ご自身の責任のもとでお使いいただくようお願いします。
- 課題実行中に中断したいときには[ESC]キーを押してください。その際,データは残りませんのでご注意ください。
- 視線入力では,まばたきが減ることなどで目の疲れを感じる方がいらっしゃいます。特に子どもさんでは,長時間の視線での利用を避けるようご配慮ください。
PC版プログラムのダウンロード
プログラムは,「TMT02010_release」という名前のフォルダごとzip形式で圧縮されて1つのファイルになっています。ダウンロードした後に,必ずフォルダごとすべてのファイルを解凍してからお使いください。
- トレイルメイキングテスト(TMT02)Unity版のダウンロード…TMT02010_release.zip
バージョン情報
- v2.001…最初のバージョン(2020/9/7)
- v2.002…以下の点を修正(2020/9/24)
- 32ビットバージョンが必要な方はこれをダウンロードして使ってください。
- Surface Book2のタッチ入力時に,Windowsの常駐サービスであるデスクトップウィンドウマネージャーのセッションポート登録によって,エラーで落ちるようになったので修正。
- v2.003…Part Bをアルファベットでできる英語モードを追加しました。また,64ビットプログラムに変更するとともに,Tobii Eye tracker 5のドライバのバージョンアップに対応しました。(2023/7/1)
- v2.010…以下の点を修正(2024/7/21)
- Windows版/Web版,日本語版/英語版のフォントを共通にしました。
- プログラム名をTMT02.exeにしました。これに伴い,結果のサマリーデータのファイル名も“_TMT02.csv”に変更しました。
- クリック音が再生されないことがある点を修正してみました(再現できないのでおそらく…)。